令和2年度京都府立医科大学附属北部医療センター 病院指標
目次
集計条件
今回の集計結果を「病院情報の公表」として公開するにあたっては、医療広告ガイドラインを遵守しています。
(厚生労働省ホームページ「医療法における病院等の広告規制について」リンク)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf
令和2年4月1日から令和3年3月31日までの退院患者数を集計しています。
入院した後24時間以内に死亡した患者、生後1週間以内に死亡した新生児、臓器移植は集計対象外としています。
診療科名は医療法に基づいた標榜診療科名で表記しています。
10件未満の数値の場合(0を含む)は-(ハイフン)で表記しています。
「(2)診断群分類別患者数等」について、転科があった場合には、診療科は医療資源を最も投入した傷病の担当医が所属する診療科で集計しています。
「(6)診療科別主要手術別患者数等」について、同一手術において複数の手術手技を行った場合、主たるもののみカウントしています。
「(6)診療科別主要手術別患者数等」について、創傷処理、皮膚切開術、非観血的整復術、徒手整復術などの軽微な手術は今回の集計からは対象外としています。
I 年齢階級別退院患者数
解説
北部医療センターが属する丹後医療圏は宮津市・与謝野町・伊根町・京丹後市の2市2町で構成され、人口は約9万3千人、65歳以上人口を示す高齢化率は約38.0%であり、これは京都府全体よりも約8.9%、全国平均よりも約9.2%高い数値であり、比較的少子高齢化の進んだ地域といえます。
少子高齢化、医療過疎が進む丹後医療圏において総合的かつ高度・専門的な医療を安定して提供していくため、平成25年4月より開設された京都府立医科大学附属北部医療センターは、急な病気や怪我、持病の悪化などにより緊急で治療を必要とする患者様の為の病床(急性期病床)が276床、結核療養のための病床が15床、感染症により集中治療が必要な場合の病床が4床、計295床の病床で運営をしています。また急性期病床は1日トータルで1人の看護師が7人の入院患者のケアを担当する7対1病床であり、また丹後医療圏の中で唯一、急性期でも更に集中治療を必要とする症例に対応するための病床(ハイケアユニット病床)を16床設置しています。
令和2年4月1日から令和3年3月31日までの退院患者総数は前年度よりも減(476症例)となっていました。これは令和2年5月の緊急事態宣言時、緊急性の低い内視鏡検査や手術の延期を行ったことによる新規入院数の減少や、全国的な傾向と同様に、小児を中心としたインフルエンザなどの感染症発症件数の減、高齢者を中心とした肺炎発症件数の減、また移動制限による交通事故による負傷や転倒による骨折発生件数の減など、新型コロナウイルス感染症の流行による影響が大きいと考えられます。
令和2年4月1日から令和3年3月31日までの退院患者数の年齢構成について、0歳から9歳までの患者割合は約3.9%となっていました。新生児の低体重での出産によるNICUへの入院、食物アレルギーの検査入院や小児肺炎、喘息発作などの呼吸器系疾患や、てんかんで入院した症例が大多数を占めますが、扁桃炎・中耳炎での耳鼻科や外傷による整形外科といったケースでの入院症例も見受けられました。入院患者が前年度対比では62.3%と大きく減少した年代で、インフルエンザなどの感染症による入院が特に減少していました。
10歳から19歳までの患者割合は約1%となっていました。急性虫垂炎での外科入院が多くなっていました。その他の入院症例としては扁桃炎・中耳炎での耳鼻科入院、外傷による骨折や靱帯の損傷での整形外科入院といったケースが見受けられました。この年代も前年度対比では54.5%と、大きく減少した年代となっていました。
20歳から29歳までの患者割合は約2.6%であり、卵巣腫瘍や子宮ポリープなどによる産科・婦人科での入院が多くなっていました。今回の患者数集計には自然分娩での入院数はカウントされていませんが、自然分娩を含む令和2年度の当院での分娩件数は251件となっていました。他科での入院症例としては急性虫垂炎などによる外科入院、肺炎での呼吸器科、扁桃炎などによる耳鼻科入院といったケースが見受けられました。
30歳から39歳までの患者割合は約3.6%となっていました。産科・婦人科での入院が大半を占めていました。他科での入院症例としては胆嚢結石による消化器内科入院、扁桃炎・中耳炎での耳鼻科入院といったケースが見受けられました。
40歳から49歳までの患者割合は約3.7%となっていました。子宮筋腫や卵巣のう腫での産婦人科入院、大腸ポリープや急性膵炎での消化器内科入院などが多くなっていました。乳がん・子宮頸がんなどの悪性腫瘍での入院も見受けられました。
50歳から59歳までの患者割合は約8.2%となっていました。大腸ポリープでの消化器内科入院の他に子宮頚がん・乳がん・大腸がん・虫垂炎などでの外科入院、心疾患による循環器内科入院などが多くなっていました。
60歳から69歳までの患者割合は約13.8%となっていました。胃がん・大腸がん・肝がん・大腸ポリープなどでの消化器内科入院、白内障などでの眼科入院、心疾患での循環器内科入院、骨折や関節の疾患などによる整形外科入院、肺がんでの呼吸器内科入院などが多くなっていました。
70歳から79歳までの患者割合は約29.6%となっていました。後述の80歳代と合わせると全体の半数以上の退院患者数をこの年代で占めていました。肝細胞がん・大腸ポリープなどでの消化器内科入院、胃がん・大腸がんでの消化器内科入院、肺がんでの呼吸器科入院、白内障での眼科入院、骨折や関節の疾患などによる整形外科入院、心疾患での循環器内科入院などが多くなっていました。
80歳から89歳までの患者割合は約23.9%となっていました。単独では最も患者数が多い年代となっていました。胆管結石や胆管炎などによる消化器内科入院、白内障での眼科入院、骨折や関節の疾患などによる整形外科入院、心疾患での循環器内科入院などが多くなっていました。悪性腫瘍や肺炎での入院が多くなっているのもこの世代の特徴となっていました。
90歳以上の患者割合は約9.7%となっていました。心疾患での循環器内科入院、骨折での整形外科入院、肺炎での消化器内科入院などが多くなっていました。
Ⅱ 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
解説
消化器内科にて令和2年度に最も多かった疾患は「小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。) 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術」となっていました。あらかじめ入院の日程を計画し、内視鏡下にて大腸にできたポリープを切除する目的で入院した症例が中心となっていました。
2番目に多かった疾患は「胆管(肝内外)結石、胆管炎 限局性腹腔膿瘍手術等 手術・処置等2なし 副傷病なし」となっていしまた。肝臓から十二指腸まで胆汁を運ぶ役割をしている胆管に、結石などが生じたことが原因となり胆管炎や閉塞性黄疸などを引き起こした症例に対し、内視鏡を用いて結石を除去し、胆道ステントと呼ばれる管を挿入し胆汁が腸管に流れるようにする手術を行った入院が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「胃の悪性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術」となっていました。胃がんに対し「内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術」(ESD)という、内視鏡下に病変部を粘膜下層まで切除する手術をおこなった入院が中心となっていました。「ESD」は従来の粘膜下切除術(EMR)と比較し、より大きなサイズの病変を切除できる内視鏡の手術となっています。
4番目に多かった疾患は「誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし」となっていました。食べ物や飲物、胃液などが誤って気管や気管支に入ることを「誤嚥」といいます。細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで生じる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。当院では他職種からなる摂食嚥下チームを中心に、入院中の対象者に口腔ケアをおこなうなど、地域での誤嚥性肺炎の発生の抑制に努めています。
5番目に多かった疾患は「肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。) その他の手術あり 手術・処置等2なし」となっていました。肝がんに対し血管塞栓術という、カテーテルを血管から挿入し、X線透視下に目標とする血管まで進め、この血管を特殊な物質で遮断し、がん細胞を死滅させる目的の手術治療を行った症例が中心となっていました。
解説
循環器内科にて令和2年度に最も多かった疾患は「心不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし」となっていました。心不全はさまざまな心臓病が悪化し、全身に十分な血液を送り出せなくなった状態をあらわした症候名のことをいいます。心不全が発生すると肺や下肢、その他全身組織に水分がたまり、呼吸困難や浮腫を来たします。重篤化の場合には手術や人工呼吸の適応となりますが、今回は酸素吸入や薬液治療を行った症例が中心となっていました。
2番目に多かった疾患は「狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術等 手術・処置等1-なし、1,2あり 手術・処置等2なし」となっていました。狭心症は心臓の筋肉(心筋)に酸素を供給している冠動脈が狭窄し、心筋の酸素供給が不足し(虚血)、胸痛や背部痛、胸部不快感などの狭心発作を引き起こした虚血性疾患のことをいいます。狭窄した冠動脈に対し、非開胸で経皮的にバルーンやステントを挿入し冠状動脈の狭窄を解除する手術を行った入院症例が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 手術・処置等1-1あり 手術・処置等2なし」となっていました。前出の狭心症などの心疾患に対し、心臓カテーテル法による諸検査を行った検査目的の入院症例が中心となっていました。
4番目に多かった疾患は「誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2 なし」となっていました。食べ物や飲物、胃液などが誤って気管や気管支に入ることを「誤嚥」といいます。脳梗塞の後遺症として引き起こされる嚥下困難症により在宅時に発生した肺炎の治療症例が中心となっていました。
5番目に多かった疾患は「閉塞性動脈疾患 動脈塞栓除去術 その他のもの(観血的なもの)等 手術・処置等1 なし、1あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし」となっていました。閉塞性動脈疾患は足の血管の動脈硬化が進み、充分な血流が保てなくなったために足のしびれ、痛み、冷感などの症状が現れる病気です。経皮的にバルーンやステントを挿入する血管拡張による治療を行った症例が中心となっていました。
解説
呼吸器内科にて令和2年度に最も多かった疾患は「肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 あり 手術・処置等2 なし」となっていました。画像診断などにより肺がんが強く疑われる場合、確定診断や今後の治療方針決定のために気管支鏡という器具を用い腫瘍の一部を採取し精査をおこなう検査目的での入院症例となっていました。
2番目に多かった疾患は「肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 9あり」となっていました。肺がんに対する化学療法目的での入院のうち、ニボルマブ(医薬品名「オプジーボ」)、ペムブロリズマブ(医薬品名「キイトルーダ」)、アテゾリズマブ(医薬品名「テセントリク」)など、免疫チェックポイント阻害剤を使用した化学療法症例が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし」となっていました。肺がんに対し疼痛コントロールなど、緩和ケア目的での入院症例などが中心となっていました。
4番目に多かった疾患は「間質性肺炎 手術・処置等2なし」となっていました。間質性肺炎とは、感染症以外の原因で肺間質と呼ばれる気管支、小葉区、胸膜などに炎症を起こした疾患です。間質性肺炎に対し、投薬による薬物治療をおこなった症例が中心となっていました。。
5番目に多かった疾患は「肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 なし」となっていました。肺がんに対し、特定の抗癌剤(アバスチン、カルボプラチンとパクリタキセル、アリムタ、オプジーボ等)以外を使用した肺がんの化学療法入院が中心となっていました。。
解説
神経内科は脳梗塞が中心となります。DPCにおいて脳梗塞は、発症時期(3日以内かどうか)、JCSという分類法により区分される意識レベル、Rankin Scaleという分類法により区分される発症前の介助の必要度と、その治療内容により区別がなされます。。
神経内科にて令和2年度に最も多かった疾患は「脳梗塞(脳卒中発症3日目以内、かつ、JCS10未満) 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2-4あり 副傷病なし 発症前Rankin Scale 0、1又は2」となっていました。発生後3日以内の急性期でありかつ来院時の意識レベルが呼びかけで容易に開眼するレベル以上であった状態で、入院後にエダラボン(医薬品名「ラジカット」)を使用した薬物治療を行った症例が件数としては最も多かったことになります。退院先として、約20%がリハビリ目的に回復期病棟や療養病院などに転院されていました。
2番目に多かった疾患は「てんかん 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし」となっていました。てんかんは一般に意識消失を伴う全身性の強直性および間代性痙攣発作をきたす疾患です。救急入院後、薬物治療をおこなった入院症例が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)(JCS10未満) 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし」となっていました。打撲などの外的要因によらずに発生した脳出血の治療症例となっていました。
4番目に多かった疾患は「脳梗塞(脳卒中発症3日目以内、かつ、JCS10以上) 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 なし 発症前Rankin Scale 0、1又は2」となっていました。来院時の意識レベルが前出の脳梗塞よりもやや重症状態で入院した症例が中心となっていました。退院先として、約54%がリハビリ目的に回復期病棟や療養病院などに転院されていました。
5番目に多かった疾患は「非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)(JCS10以上) 手術なし 手術・処置等2 なし」となっていました。打撲などの外的要因によらずに発生した脳出血の治療症例のうち、より重症度の高かった症例となっていました。
解説
内科にて令和2年度に最も多かった疾患は「その他の感染症(真菌を除く。) 定義副傷病 なし」となっていました。いわゆる新型コロナウイルス感染症患者で入院治療が必要となり治療を行った症例が中心となっていました。
2番目に多かった疾患は「重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし」となっていました。自己の体内の細胞を異物と認識したために自己抗体やリンパ球が作られ、自己の細胞が攻撃されて起きる組織の傷害や病変を自己免疫性疾患といいます。全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎などの全身に発症する自己免疫性疾患に対し、薬物療法を中心とした治療を行った症例が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「腎臓又は尿路の感染症 手術なし」となっていました。腎臓と尿管の接続部である腎盂や膀胱が細菌感染を起こした腎盂腎炎や膀胱炎に対し補液などの薬物治療を行った症例が中心となっていました。
4番目に多かった疾患は「誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2 なし」となっていました。食べ物や飲物、胃液などが誤って気管や気管支に入ることを「誤嚥」といいます。脳梗塞の後遺症として引き起こされる嚥下困難症により在宅時に発生した肺炎の治療症例が中心となっていました。
5番目に多かった疾患は「間質性肺炎 手術・処置等2なし」となっていました。間質性肺炎とは、感染症以外の原因で肺間質と呼ばれる気管支、小葉区、胸膜などに炎症を起こした疾患です。間質性肺炎に対し、投薬による薬物治療をおこなった症例が中心となっていました。
解説
外科にて令和2年度に最も多かった疾患は「鼠径ヘルニア(15歳以上) ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等」となっていました。ヘルニアは体内の臓器が本来あるべき部位から脱出・突出した状態のことを指します。症例としては鼠径ヘルニアに対し、開腹及び腹腔鏡下で切除・摘出を行った症例が中心となっていました。
2番目に多かった疾患は「胆嚢疾患(胆嚢結石など) 腹腔鏡下胆嚢摘出術等」となっていました。胆嚢は脂肪やタンパク質を分解する胆汁を蓄積している臓器です。結石などが原因で胆嚢が炎症をおこした状態を胆のう炎といいます。胆のう結石症に対し、腹腔鏡下で摘出を行った症例が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「胃の悪性腫瘍 胃切除術 悪性腫瘍手術等」となっていました。胃がんでの開腹及び腹腔鏡下での胃切除術症例が中心となっていました。手術手技としては開腹によるものが6件、腹腔鏡下によるものが19件となっていました。
4番目に多かった疾患は「結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 結腸切除術 全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術等 手術・処置等1 なし 定義副傷病 なし」となっていました。大腸がんでの開腹及び腹腔鏡下での結腸切除術症例が中心となっていました。手術手技としては開腹によるものが1件、腹腔鏡下によるものが18件となっていました。
5番目に多かった疾患は「虫垂炎 手術なし 定義副傷病 なし」となっていました。虫垂は盲腸の内側端に付属する細長い小指大の管腔臓器であり、これが急性の化膿性炎症を起こしたものを急性虫垂炎と呼びます。虫垂炎に対し手術ではなく抗生剤等による薬物治療をおこなった症例が中心となっていました。
解説
整形外科にて令和2元年度に最も多かった疾患は「股関節・大腿近位の骨折 人工骨頭挿入術 肩、股等」となっていました。症例としては大腿骨骨折に対し、骨折観血的手術(大腿)もしくは人工骨頭挿入術(股)を行った症例が中心となっていました。
2番目に多かった疾患は「膝関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等」となっていました。加齢に伴う変形性膝関節症に対し、関節部を人工関節に入れ替えることにより関節機能の再建を図る手術目的での入院症例が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「胸椎、腰椎以下骨折損傷(胸・腰髄損傷を含む。) 手術なし」となっていました。胸椎及び腰椎の圧迫骨折へのコルセット等での保存療法が中心となっていました。
4番目に多かった疾患は「前腕の骨折 手術あり 定義副傷病 なし」となっていました。前腕は手首と肘をつなぐ骨のことです。前腕には橈骨と尺骨という2本の骨があり、橈骨及び尺骨もしくは橈骨尺骨の骨折に対し観血的手術をおこなった症例が中心となっていました。
5番目に多かった疾患は「股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等」となっていました。変形性股関節症や突発性の大腿骨の壊死などで人工関節再置換術を行った症例が中心となっていました。
解説
産婦人科にて令和2年度に最も多かった疾患は「子宮頸・体部の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2-4あり 副傷病なし」となっていました。症例としては子宮頚癌・子宮体癌に対する化学療法による治療目的での入院が中心となっていました。
2番目に多かった疾患は「子宮頸・体部の悪性腫瘍 子宮悪性腫瘍手術等 手術・処置等2なし」となっていました。症例としては子宮頚部異形成という、子宮頸部に発生する腫瘍性病変のうち、中等度異形成と診断された症例に対する切除術目的での入院が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「子宮の良性腫瘍 子宮全摘術等」となっていました。症例としては子宮筋腫や子宮内膜増殖症に対し、開腹により子宮を全摘出する手術目的での入院が中心となっていました。
4番目に多かった疾患は「子宮の良性腫瘍 腹腔鏡下腟式子宮全摘術等」となっていました。症例としては子宮筋腫や子宮内膜増殖症に対し、腹腔鏡により子宮を全摘出する手術目的での入院が中心となっていました。
5番目に多かった疾患は「妊娠合併症等 手術なし」となっていました。いわゆる「つわり」が重度であり、脱水症状をきたしたため、補液による全身管理をおこなった症例が中心となっていました。
解説
小児科にて令和2年度に最も多かった疾患は「妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(出生時体重2500g以上) 手術なし 手術・処置等2 なし」となっていました。新生児黄疸や新生児一過性多呼吸、新生児低血糖など出生直後の新生児疾患が中心となっていました。症例内容としては新生児黄疸に対し光線療法などの治療を行った症例が中心となっていました。
2番目に多かった疾患は「妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(出生時体重2500g以上) 手術なし 手術・処置等2 1あり」となっていました。新生児一過性多呼吸、新生児低血糖など出生直後の新生児疾患が中心となっていました。症例内容としては新生児に人工呼吸器による呼吸管理を行った症例が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「肺炎等(1歳以上15歳未満) 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし」となっていました。気管支に発生した炎症が肺にまで広がってみられた場合、肺炎と診断されます。診断には通常胸部レントゲンで行います。小児肺炎に対し点滴・吸入を中心とした治療を行った症例が中心となっていました。令和2年度の実績は10件以下の8件となっていました。
4番目に多かった疾患は「妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(出生時体重1500g以上2500g未満) 手術なし 手術・処置等2 なし」となっていました。出生時体重1500g以上2500g未満で出生した早産児の治療を行った症例が中心となっていました。令和2年度の実績は10件以下の8件となっていました。
5番目に多かった疾患は「水頭症 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし」となっていました。水頭症の疑いのある乳幼児に対しての検査入院が中心となっていました。令和2年度の実績は10件以下の7件となっていました。
解説
眼科にて令和2年度に最も多かった疾患は「白内障、水晶体の疾患 手術あり 片眼」となっていました。水晶体の混濁で視力が低下した場合、混濁した水晶体を除去しただけでは通常は焦点が合わなくなるので、レンズを同時に挿入し、視力を回復させる水晶体手術を行った症例が中心となっていました。
2番目に多かった疾患は「黄斑、後極変性 手術あり 手術・処置等1 あり 手術・処置等2 なし」となっていました。角膜から入った光は水晶体や硝子体と呼ばれる透明な部分を経過して網膜と呼ばれる部分に到達し、脳へと情報を送り込み視覚として自覚することになります。網膜の中でも中心窩と呼ばれる部分があり、ここを囲う形で黄斑があります。加齢により硝子体が収縮し網膜が引っ張られることにより黄斑に亀裂が入り欠損することがあります。これを黄斑円孔といいます。硝子体手術を目的とする入院症例が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「緑内障 その他の手術あり 片眼」となっていました。何らかの理由で眼が正常な機能を保てる適性眼圧以上に眼圧が上昇することにより視力障害が発生する疾患を緑内障といいます。房水の流れるルートを開放して眼圧を下げることを目的とする手術を行った症例が中心となっていました。
4番目に多かった疾患は「硝子体疾患 手術あり 片眼」となっていました。眼球の内側を裏打ちしている網膜が剥がれてしまし、視力低下が起きる網膜剥離や網膜裂孔、糖尿病性網膜症や加齢性黄斑変性などの理由により硝子体に出血や混濁などが引き起こされた硝子体の疾患に対し、手術による治療を行った症例が中心となっていました。
5番目に多かった疾患は「網膜剥離 手術あり 片眼」となっていました。眼球の内側を裏打ちしている網膜が剥がれてしまし、視力低下が起きる疾患を網膜剥離といいます。網膜剥離に対して網膜光凝固術、網膜復位術などを行った症例が中心となっていました。令和2年度の実績は10件以下の9件となっていました。
解説
耳鼻いんこう科にて令和2年度に最も多かった疾患は「慢性副鼻腔炎」となっていました。何らかの原因により副鼻腔に膿の溜まった状態である慢性副鼻腔炎に対し、内視鏡下に鼻・副鼻腔手術を行った症例が中心となっていました。
2番目に多かった疾患は咽頭腫瘍や顎下腺腫瘍、舌腫瘍などの腫瘍の切除目的に入院した「耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍 手術あり」となっていました。
3番目に多かった疾患は「扁桃、アデノイドの慢性疾患」となっていました。急性扁桃炎を反復する習慣性アンギーナや慢性扁桃炎に対し、手術により口蓋扁桃の摘出を行った症例が中心となっていました。
4番目に多かった疾患は「滲出性中耳炎、耳管炎、耳管閉塞 手術あり」となっていました。難治性の滲出性中耳炎に対し、長期間にわたって中耳内の滲出液を除去し中耳の換気を正常化する鼓膜チューブを挿入・留置する手術をおこなった症例が中心となっていました。
5番目に多かった疾患は「扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽頭喉頭炎 手術なし」となっていました。症例としては急性扁桃炎に対し、補液などの薬物治療を行った症例が中心となっていました。
解説
泌尿器科にて令和2年度に最も多かった疾患は「前立腺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 あり」となっていました。前立腺癌が疑われる症例に対し、生検用の針を穿刺し、組織の一部を採取し病理診断をおこなうための検査入院症例となっていました。
2番目に多かった疾患は「膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 手術・処置等2 2あり 定義副傷病 なし」となっていました。膀胱がんに対し膀胱腫瘍摘出手術と化学療法を行った症例が中心となっていました。
3番目に多かった疾患は「水腎症等 経尿道的尿管ステント留置術等 定義副傷病 なし」となっていました。尿管結石などにより尿道が狭くなり、尿が停留し腎盂腎杯の拡張をきたし腎が圧迫され萎縮を引き起こした症例を水腎症といいます。水腎症の改善に、尿道からバルーンを挿入し尿道を拡張し、ピッグテイルの太いカテーテルを留置して尿管内腔を確保するための手術を行った症例が中心となっていました。
4番目に多かった疾患は「上部尿路疾患 経尿道的尿路結石除去術 手術・処置等1 なし 定義副傷病 なし」となっていました。尿管結石症や腎結石症に対し、尿道から内視鏡を挿入しレーザーにより破砕除去を行う手術を行った症例が中心となっていました。
5番目に多かった疾患は「腎臓又は尿路の感染症 手術なし」となっていました。腎臓と尿管の接続部である腎盂や膀胱が細菌感染を起こした腎盂腎炎や膀胱炎に対し補液などの薬物治療を行った症例が中心となっていました。
解説
皮膚科にて令和2年度に最も多かった疾患は「皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外) 皮膚悪性腫瘍切除術等 手術・処置等2 なし」となっていました。ボーエン病や有棘細胞癌などのいわゆる皮膚がんに対し手術治療を行った症例が中心となっていました。症例件数は10件以下の9症例となっていました。
2番目に多かった疾患は「皮膚の良性新生物 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)等 手術・処置等1 なし」となっていました。膚がん以外の、良性の皮膚腫瘍に対し手術治療を行った症例が中心となっていました。症例件数は10件以下の8症例となっていました。
3番目に多かった疾患は「帯状疱疹」となっていました。ヘルペスウイルスにより引き起こされる帯状疱疹に対し点滴入院治療を行った症例が中心となっていました。症例件数は10件以下の6症例となっていました。
4番目に多かった疾患は「膿皮症 手術・処置等1-なし」となっていました。症例としては蜂巣炎・蜂窩織炎などによる皮膚の膿瘍に対し点滴治療を行った症例が中心となっていました。症例件数は10件以下の5症例となっていました。
5番目に多かった疾患は「水疱症 手術・処置等2-2あり」となっていました。水疱性類天疱瘡に対しガンマグロブリンによる点滴治療を行った症例が中心となっていました。症例件数は10件以下の4症例となっていました。
Ⅲ 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
(※)1=「UICC TMN分類」 (2)=「がん取り扱い規約」
解説
がんを含む腫瘍病変は新生物疾患として分類され、当院でも最も患者数が多い疾患となっています。
なかでも悪性新生物、いわゆるがんは、UICC(国際対がん連合)により取り決められた「UICC TNM分類」という手法や、各学会により取り決められた「癌取扱い規約」を用い、進行度合をStage分類として表示します。TNM分類のTはがんが組織のどのあたりまで進んでいるのかという壁深達度を(原発腫瘍)、Nはがんが発生した臓器の所属するリンパ節への転移の有無を(所属リンパ節転移)、Mは発生臓器から離れた転移の有無(遠隔転移)を示し、3項目の組合せによりStage分類を行っています。
5大がんの初発患者はUICCのTNMから示される病期分類による患者数を、再発患者(再発部位によらない)は期間内の患者数として表示しています。
なお、今回の集計ではStage0と診断された症例はカウントから除外しています。
再発を含んだ件数で最も多かったがんは肺がんで、続いて胃がん、大腸がん、肝がん、乳がんとなっていました。件数としては肺がんの件数が前年度と比較して微増、他のがんは微減となっていました。
当院において発見、初回治療された初発患者の病期をみると、胃がんについてはStageⅠの割合が高く、病期の早期のうちに診断され内視鏡による手術が行われているケースが多くなっていました。またStageⅣと診断された症例については化学療法を中心に治療が行われていました。大腸がんについてはStageⅠの早期と診断され、内視鏡による手術が行われたケースと、StageⅡもしくはStageⅢでの少し進んだ状態で発見され、腹腔鏡を中心とした手術療法が行われているケースが中心となっていました。乳がんはStageⅠ~Ⅱの割合が高く、病期の早期のうちに診断され外科的療法を中心とした治療が行われていました。肺がんについてはStageⅢ・Ⅳの進行がんで発見され化学療法や緩和ケアを中心とした治療が行われる割合が高いのが特徴でした。肝がんは肝炎ウイルスの治療などにより初発患者が減少していますが、再発患者の治療が多く行われていたのが特徴となっていました。
全体を通じて、オプジーボやキイトルーダに代表される免疫チェックポイント阻害剤などの新しい薬が承認されたことや遺伝子パネル検査の普及などにより入院で行われる化学療法が増加した結果、Stageのランクや再発患者数は前年度よりも増加している傾向にあります。
Ⅳ 成人市中肺炎の重症度別患者数等
解説
肺炎は病原体感染により肺実質が炎症した状態をいいます。また、基礎疾患のない健康人に発症した肺炎を市中肺炎といい、逆に入院中の院内感染により発症した肺炎を院内肺炎といいます。また、高齢者や脳梗塞の後遺症による影響から、唾液や食物、胃液などと口腔内の細菌を一緒に誤嚥することにより発症する「誤嚥性肺炎」と呼ばれる肺炎があります。
ここでは20歳以上の成人に発症した市中肺炎について重症度別に表示しています。また前出の誤嚥性肺炎の症例も除外された件数となっています。重症度はA-DROPスコアという判定方法を使用しています。これは、罹患した患者の年齢(男性70歳以上、女性75歳以上かどうか)、脱水症状はあるか、呼吸状態はどうか、意識状態はどうか、血圧状態はどうか、の5項目を観察し、5段階評価で分類する方法です。これを5点満点で1項目該当すれば1点とし、0点を軽症、1~2点を中等症、3点を重症、4~5点の場合を超重症としています。ただしショック状態があればスコアにかかわらず超重症に分類しています。
当院での令和元年度の実績は軽症の7件、超重症の7件を含め発生件数は58件、70~80歳代の重症症例が中心で、平均在院日数は全体で18.0日、最も症例数の多かった重症症例が18.78日となっていました。前年度と比較し、肺炎の発生件数は約44%と大きく減少していました。中等症の件数が大きく減少し、重症件数が増加したため、平均在院日数は長期化していました。
診療科としては総合内科、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科での入院が中心となっていました。初期治療として抗生剤や補液による薬物治療、場合によっては酸素吸入などの呼吸管理が行われていました。
Ⅴ 脳梗塞のIDC10別患者数等
解説
脳の血管が狭窄や閉塞など、何らかの理由で血流が阻害され酸欠・栄養不足に陥り、その結果脳組織が壊死してしまった状態を脳梗塞といいます。入院中に最も医療資源を投入した傷病名をICD-10コードという分類法を用い脳梗塞に関連する病名を集計しています。
当院での脳梗塞の令和2年度の患者数は全退院患者のうち2.3%であり、前年度とほぼ同数となっていました。
脳梗塞としての内訳は、頭蓋内の血管が動脈硬化をきたすことにより生じるアテローム血栓性脳梗塞が52件、不整脈により心臓内で形成された血栓により脳血管が閉塞する心原性脳塞栓症が35件、脳深部の非常に細かい血管が閉塞することで生じるラクナ梗塞が12件、その他が23件となっていました。
大半はエダラボンという脳保護剤を投与し、後遺障害があればリハビリテーションによる理学療法をおこなっていましたが、超急性期症例には発症後4.5時間以内で投与可能なt-PAの静脈内投与による血栓溶解療法も行なわれていました。(令和2年度7件)
転院先としては治療後のリハビリテーション目的のために、近隣の回復期病床への転院が中心となっていました。リハビリ目的の転院が多いので、他の疾患と比較し、転院率は高くなっていました。
Ⅵ 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
解説
消化器内科の手術の特徴としては、内視鏡を用いた手術と、放射線科と連携し、IVR(画像下治療)で行われる治療が多いのが特徴です。
消化器内科で最も多かった手術は大腸ポリープに対し、内視鏡下でポリープ切除を行う「内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術」となっていました。通常、1泊2日での予約入院にて行われる手術となっています。
2番目は「内視鏡的胆道ステント留置術」といい、胆管炎や胆管がんにより引き起こされる胆道狭窄に対し、内視鏡によりチューブを胆管内に留置し、胆汁が腸管に流れるようにする手術となっていました。急性期に減黄目的に一時留置する他、高齢者や悪性胆道狭窄に対し永久留置を行う場合もあります。
3番目は「内視鏡的消化管止血術」となっていました。消化管の出血部位を内視鏡下に確認し、鉗子孔からの操作で止血する手術となります。
4番目は「内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 早期悪性腫瘍胃粘膜下層剥離術」(ESD)といい、早期の胃がん・十二指腸がんに対し、内視鏡により病変部を粘膜下層まで切除を行う手術となっていました。従来の粘膜下切除術(EMR)と比較し、ESDはより大きくなサイズの病変を切除できる手術となっています。。
5番目は「内視鏡的乳頭切開術」といい、胆管結石に対し、内視鏡により十二指腸乳頭を切開し結石の除去を行う手術となっていました。
解説
循環器内科の手術の特徴としてはアンギオグラフィー(血管造影)といい、一般的に手首や大腿鼠径部などの血管からカテーテルと呼ばれる管を挿入し、血管の内部に造影剤を注入し、血管の形状や走行などを視覚的に検査・治療を行う手法を用いた手術が中心となっています。基本的には冠動脈という、心臓に栄養を送る血管に対する治療が中心となっていますが、最近では丹後医療圏で唯一の専門科である腎臓内科と連携した下肢の動脈への手術も増加しています。また平成28年度より救急部門に生態情報モニターシステムを導入し、急性冠症候群の疑いのある症例に対し、迅速に診断・治療が行えるよう、体制の強化を行っています。
循環器内科で最も多かった手術は狭心症や心筋梗塞に対して行う「経皮的冠動脈ステント留置術」となっていました。狭心症や心筋梗塞に対し、非開胸で経皮的に冠状動脈の狭窄を解除する手術となります。「ステント」とは組織を支持する装置という意味で、バルーンにより狭窄部を拡張後、内腔側からステントで補強する方法になります。不安定狭心症は心筋梗塞に移行しやすく、高度かつ広範な心筋虚血の遷延から突然死にいたるリスクが高く、迅速に診断・治療を進める必要性の高い疾患です。
2番目は「四肢の血管拡張術」といい、主に下肢の動脈が閉塞する下肢閉塞性動脈硬化症に対し経皮的に狭窄部を貫通、拡張する手術となっていました。下肢閉塞性動脈硬化症の症状は冷感にはじまり、歩行時の痛み、安静時痛、潰瘍・壊死の順に重症となります。「四肢の血管拡張術」は大腿部の血管を穿刺し、バルーンカテーテルで狭窄部を拡張し、血流を改善させる治療となります。
3番目はバルーンカテーテルという器具を透視下で血管に挿入し、狭窄部位の拡張を行い冠血流量を増大させる目的で行われる「経皮的冠動脈形成術」のうち、急性心筋梗塞や不安定狭心症以外の狭窄症に対して実施された症例となっていました。
4番目は前出の、心筋梗塞に対して行う「経皮的冠動脈ステント留置術」のうち、緊急で、急性心筋梗塞に対して実施された症例となっていました。
5番目は「ペースメーカー移植術(経静脈電極)」といい、主に不整脈や心房細動に対し、経皮的に心臓に電気刺激を与えて心拍動を起こさせる装置を埋め込む手術となっていました。近年ではMRI撮影にも対応したペースメーカーが埋め込みに使用されています。
解説
外科の手術の特徴としては、癌などの病変に対し開腹術や腹腔鏡下にて切除・除去を行う手術が中心となっています。腹腔鏡下術とは腹部にポートと呼ばれる筒状の器具を挿入する穴を数ヶ所開け、内部を写す腹腔鏡と呼ばれるカメラを挿入し、映像をモニターで観察しながら鉗子やメスを操作して病変を切除・除去する手術のことです。開腹手術よりも出血量が少なく、腸管の回復も早く術後の主な合併症である癒着が少ない、などのメリットがあります。ただ病変が大きい場合には切除仕切れないケースがあり、こういった場合には開腹による手法が選択されています。
外科で最も多かった手術は「腹腔鏡下胆嚢摘出術」といい、胆石や細菌感染などにより炎症をおこした胆嚢を腹腔鏡下にて切除・除去を行う手術となっていました。胆嚢は脂肪やタンパク質を分解する胆汁を蓄積している臓器です。結石などが原因で胆嚢が炎症をおこした状態を胆のう炎といい、腹腔鏡下に病巣の摘出を行った手術となっていました。
2番目は。鼠径部に発生したヘルニアに対し開腹にて切除・除去を行う「鼠径ヘルニア手術」となっていました。ヘルニアは体内の臓器が本来あるべき部位から脱出・突出した状態のことを指します。鼡径ヘルニアは最も頻度の高いヘルニアです。平均して入院期間4日で行う手術となっていました。
3番目は前出のヘルニア切除術を腹腔鏡下で行った「腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側)」となっていました。
4番目は「腹腔鏡下胃切除術 悪性腫瘍手術」といい、腹腔鏡下に胃にできたがんを切除・摘出する手術となっていました。
5番目は「腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術」といい、腹腔鏡下に結腸にできたがんを切除・摘出する手術となっていました。結腸とは大腸の事で、盲腸部から直腸上部までの腸管を指します。
解説
整形外科で最も多かった手術は骨折部を直接手術的に開いて整復と内固定を行う「骨折観血的手術 上腕、大腿」となっていました。太ももには大腿骨という太い骨が一本通っています。高齢者では転倒などにより大腿骨のうち股関節に近い転子部と呼ばれる部分を骨折することが多く、この転子部骨折に対する手術が93件の症例数の大半を占めており、件数としては79件となっていました。また転倒時に手をついた時、肩の付け根に近い腕の骨(上腕骨近位端)の骨折も高齢者にはおこりやすく、この上腕骨に対する手術についての件数は14件となっていました。
2番目は「人工関節置換術 肩、股、膝」となっていました。骨頭部だけでなく関節窩の側にも破壊・変形・癒着などがあって関節の動きが悪い、運動痛が強い、不安定で支持性が低いなどの運動障害があるとき、関節部を人工関節に入れ替えることにより関節機能の再建を図る手術となっていました。部位の内訳としては57件が膝関節、19件が股関節に対し行われたものとなっていました。
3番目は「関節内骨折観血的手術 肩、股、膝、肘」となっていました。股関節や膝関節などの骨折時、骨折線が骨の関節を構成する部分まで及んでおり、放置すれば転位・変形が生じて関節機能に障害を残すことが予測されたとき、観血的に整復術を行うことにより骨折の治療と関節機能の維持を行う手術となっていました。
4番目は「骨骨内異物(挿入物)除去術」といい、前出の大腿骨や上腕骨の骨折観血手術的に使用した内副子と呼ばれる固定具を、骨折部の癒合後除去を行う手術となっていました。
5番目は「関節内骨折観血的手術 胸鎖、手、足」となっていました。手関節や足関節などの骨折時、骨折線が骨の関節を構成する部分まで及んでおり、放置すれば転位・変形が生じて関節機能に障害を残すことが予測されたとき、観血的に整復術を行うことにより骨折の治療と関節機能の維持を行う手術となっていました。
解説
産婦人科の手術の特徴としては帝王切開術などの産科領域の手術と、子宮全摘術などの婦人科領域での手術の2つの領域の手術が行われている事です。婦人科領域の手術について前年度は開腹での手術が上位にきていますが、腹腔鏡下での手術も年々増加しています。
産婦人科で最も多かった手術は「帝王切開術 選択帝王切開」となっていました。切迫早産妊娠、骨盤位などの理由により帝王切開での分娩の必要がある場合や、1回以上帝王切開で分娩したことのある場合にあらかじめ日時を決め予定的に手術をおこなったケースとなっていました。
2番目は「子宮全摘術(開腹)」となっていました。子宮筋腫や子宮内膜増殖症に対し、開腹により子宮を全摘出する手術となっていました。
3番目は「子宮悪性腫瘍手術」となっていました。子宮頚癌や子宮体癌に対し、切除・除去をおこなう手術となっていました。
4番目は「子宮附属器腫瘍摘出術(両)(腹腔鏡)」となっていました。卵巣がん、卵管がんなど卵巣に発生した悪性腫瘍に対し、開腹ではなく腹腔鏡下でがんを切除・摘出する手術となっていました。
5番目は「腹腔鏡下腟式子宮全摘術」となっていました。子宮筋腫や子宮内膜増殖症に対し、開腹ではなく腹腔鏡下で子宮を全摘出する手術となっていました。
解説
眼科で最も多かった手術は「水晶体再建術 眼内レンズを挿入する場合」となっていました。水晶体の混濁で視力が低下した場合、混濁した水晶体を除去しただけでは通常は焦点が合わなくなるので、レンズを同時に挿入し、視力を回復させる手術となります。通常は1~2泊入院でおこなわれますが、外来での日帰り手術でおこなうケースもあります。
2番目は「硝子体茎顕微鏡下離断術 網膜付着組織を含むもの」となっていました。増殖性糖尿病性網膜症や網膜剥離、網膜前膜などに行われる硝子体茎離断術のうち、網膜付着組織の切除も行うものとなっていました。
3番目は緑内障に対し、房水の流れるルートを開放して眼圧を下げることを目的として行われる「緑内障手術(流出路再建術」となっていました。この手術の令和元年度の実績は10件以下の9件となっていました。
4番目は「翼状片手術(弁の移植を要するもの」となっていました。翼状片とは,角膜の鼻側または耳側の球結膜組織が角膜中央部に向かって三角形に侵入してくる病態で、放置すると視力障害を引き起こすため手術により切除を行います。この手術の令和2年度の実績は10件以下の6件となっていました。
5番目は「硝子体茎顕微鏡下離断術(その他)」となっていました。増殖性糖尿病性網膜症や網膜剥離、網膜前膜などに行われた硝子体茎離断術のうち、網膜付着組織が発症していない症例に対して行われた手術となっていました。この手術の令和2年度の実績は10件以下の6件となっていました。
解説
耳鼻いんこう科で最も多かった手術は「口蓋扁桃手術 摘出」となっていました。急性扁桃炎を反復する習慣性アンギーナや慢性扁桃炎に対し、口蓋扁桃を扁桃被膜ごと前後の口蓋弓粘膜から剥離し、絞断器を使用し摘出を行う手術となっていました。
2番目は「内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型 選択的複数洞副鼻腔」となっていました。何らかの原因により副鼻腔に膿の溜まった状態である慢性副鼻腔炎に対し、内視鏡下にて副鼻腔の排泄腔の拡大や病変の除去を行う手術のうち、上顎洞と篩骨洞など、複数の副鼻腔に対し処理をおこなった手術となっていました。
3番目は「内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型 汎副鼻腔手術」となっていました、長期罹患している重症の慢性副鼻腔炎症例に対し、内視鏡下にて副鼻腔の排泄腔の拡大や病変の除去を行う手術のうち、全副鼻腔を処置した手術となっていました。
4番目は「鼓膜(排液、換気)チューブ挿入術」となっていました。難治性の滲出性中耳炎に対し、長期間にわたって中耳内の滲出液を除去し中耳の換気を正常化する鼓膜チューブを挿入・留置する手術となっていました。
5番目は「経鼻腔的翼突管神経切除術」となっていました。アレルギー性鼻炎で水性鼻漏が酷く保存療法では対処出来なくなった症例に対し、鼻汁や涙の分布を司る副翼突管神経の切除を行うとなっていました。この手術の令和2年度の実績は10件以下の7件となっていました。
解説
泌尿器科で最も多かった手術は「膀胱悪性腫瘍手術経尿道的手術 電解質溶液利用のもの」となっていました。早期に内視鏡で発見された、浸潤性でない膀胱がんに対し、尿道から内視鏡を挿入し切除・摘出をおこなう手術となっていました。
2番目は「経尿道的尿管ステント留置術」となっていました。尿管結石などにより尿管狭窄という尿道が狭くなり排尿障害を引き起こした症例に対し、尿道からバルーンを挿入し尿道を拡張し、ピッグテイルの太いカテーテルを留置して尿管内腔を確保するために行う手術となっていました。
3番目は「経尿道的尿路結石除去術 レーザーによるもの」となっていました。尿管結石症に対し、尿道から内視鏡を挿入しレーザーにより破砕除去を行う手術となっていました。
4番目は「腹腔鏡下腎(尿管)悪性腫瘍手術」となっていました。腎癌に対し、腹腔鏡下により摘出を行う手術となっていました。この手術の令和2年度の実績は10件以下の9件となっていました。
5番目は「膀胱結石、異物摘出術 経尿道的手術」となっていました。膀胱結石に対し、尿道から内視鏡を挿入し結石の除去を行う手術となっていました。この手術の令和2年度の実績は10件以下の8件となっていました。
Ⅶ その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
解説
播種性血管内凝固症候群(以降DIC)は、様々な基礎疾患を原因として全身の小血管内に血液凝固異常から血栓を形成し、それにより凝固因子が消耗され、血小板、フィブリノゲンなどが著しく低下し、皮下出血、吐血などの消化管出血や多臓器不全を引き起こす病気です。原因となる疾患は肺炎などの感染症、がん、妊娠、出産時、火傷などがあげられます。
令和2年度のDICの発生率は全退院患者に対し0.6%、全てが入院後発症した症例で件数は31件となっていました。起因となった疾患としては敗血症や悪性腫瘍、胆管炎、肺炎などであり、DICの発生理由としては重症感染症からの合併症が原因となっていました。発生件数は前年度より減少となっていました。
敗血症は、肺炎や腎盂腎炎など体のある部分で引き起こされた感染症から病原菌が血液中に入り込み、重篤な全身症状を引き起こす病気です。
令和2年度の敗血症の発生件数は入院時9件、入院後発症した症例は7件、どちらも10件以下となっていました。契機となった疾患としては肺炎・尿路感染症・胆管炎などが原因となっていました。
手術・処置等の合併症の発生率は0.45%となっていました。合併症の理由としては大半が透析用のシャントの狭窄・閉塞であり、シャントの定期的な交換目的の入院が理由となっていました。
当院では合併症を起こさないように病院全体で取り組みを行っております。ですが、残念ながら手術や処置においては一定の割合で合併症は生じてしまいますので、手術や処置を実施する前には患者さんに充分に説明し、合併症の可能性についてご理解いただくように努力しています。
更新履歴
- 令和2年度北部医療センター病院指標を公開しました。(2021/9/30)
- 令和元年度北部医療センター病院指標を公開しました。(2020/9/30)
- 平成30年度北部医療センター病院指標を公開しました。(2019/09/30)
- 平成29年度北部医療センター病院指標を公開しました。(2018/09/30)
- 平成28年度北部医療センター病院指標を公開しました。(2017/09/29)
- 平成27年度北部医療センター病院指標を公開しました。(2016/09/29)